実際に就職してみてのぶっちゃけ話

大手総合商社双日に新卒で入社し、総合商社・戦略コンサル・ベンチャーキャピタルと様々な業界で働いてきた中村さんにインタビュー!

 

まず中村さんの経歴をお教えいただけますでしょうか

 はい、新卒で総合商社の双日に入社し、財務系の部署に所属してプロジェクトの資金調達・価値評価などの案件を中心に行っていました。双日で5年働いた後アクセンチュアの戦略部門に転職し、M&A案件の対象企業調査やM&A後のオペレーション統合支援などをメインに行っていました。その中、あるプロジェクトでアクセンチュアシンガポールに移籍する機会をいただき、そこからシンガポールで働くようになりました。アクセンチュアで計3年半ほど働いたところで、Vertexというシンガポール政府系投資ファンドに転職して、現在は投資先のスタートアップの成長支援などを手掛けています。

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新卒で双日に入社したという事ですが、新卒で双日に入社して感じたギャップなどはございましたか?

 前提としてやはり新卒で入社した企業は一番ギャップを感じやすいとは思います。新卒で企業に入る分、ビジネスや会社についても表面的なことしか分かっていないのでギャップは大きいと思います。転職を重ねるにつれて感じるギャップはどんどん少なくなっていきます。

 (僕の場合)新卒で入社した双日については、父親も総合商社に勤務していて、OB訪問なども何回も行っていたため、それ程大きなギャップは無かったです。

ただ総合商社でしばらく働いて感じたギャップとしては、「ここに5年10年いても、自分が成功する事業を作れる人材にはなれないのではないか」という感覚でした。もともと僕は将来自分の事業を作りたいと思っていて、そのためのスキル・ノウハウを身に着けるためにも総合商社が最適と考え入社しました。ただ実際に入社してしばらく過ごすと、事業検討のクオリティってこれでいいのかな?と疑問を持つことが増えたり、計画通りに進まずに継続是非を検討する事業も多く見ることになり、この中で過ごすことで成功する事業を作ることのできるのか?という事について疑問を持つようになってしまいました。それが転職するきっかけにもなります。

 

転職した先のアクセンチュアはどんな印象でしたか?

 まずコンサルタントになって一番感動したのは(ムダな)事務作業の無さです。普通の事業会社では若手は事務作業ばかりなのが当たり前だと思っているのですが、アクセンチュアではプロジェクトに関する仕事のみに集中することができ、それはすごく楽しかったです。ただアクセンチュアでは昇進してマネージャーになった途端世界が変わりました。というのは、マネージャーは反対に事務作業が本当に多かったんです。人の調達や契約業務などはマネージャーが行うので、もちろんお客様の課題解決にも貢献できる分、契約やプロジェクトメンバーの調整など事務作業も多かったです。これが入社して一番感じたギャップですね。

 あとよく言われていることでもありますが、プロジェクトごとの質の違いが大きいなというのは感じました。プロジェクトによってはもちろん企業の戦略を検討するようなコンサルタントらしいプロジェクトもあれば、「ちょっと高給な派遣社員」のような仕事を任されることもあるので、プロジェクトの質の違いもギャップの一つです。

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双日からアクセンチュアに転職しようと考えた理由は何ですか?

 先ほども話した通り、僕は双日に入社する前から社会の課題を自分で解決できる人間になりたいと考えていました。総合商社に入ろうと思ったのは商社のような事業領域が広大な会社であれば目標を達成できるだろうと考えたからです。そして、まずはお金のことを学ぶために双日の財務系部署に配属してもらい、そこで5年間でお金のことをどっぷり学びました。その後、次は戦略を学ぼうと思い、先ほど話した理由から僕は双日の外に目を向けていたので、海外でMBAをとろうと思いました。しかし実際にMBA出身の方の話を聞くと「そういう理由ならMBAに行くな」「戦略がやりたいなら戦略コンサルに行きなよ」と言われてしまいました。確かに戦略コンサルでいつクビにされるか分からない状態で本物の戦略に触れる方が成長が早いだろうと考え直し、アクセンチュアの戦略コンサルに行くことに決めました。

 

Vertexに転職しようと思ったのはどうしてですか?

僕が戦略コンサルに3年半いて気づいたのは、「僕は戦略コンサルに何年いても自分で0→1で事業を作れる人間にはなれないな」という事でした。これはどの戦略コンサルにも言えることだと思いますが、戦略コンサルは基本的に大企業の顧客しか相手にしません。例えば歯医者って一回行くと何回も通うじゃないですか。色々悪いところを見つけられて何度も通わされる。これってコンサルティングファームも共通していると思っていて、1年でも長く顧客の課題を解決する立場にいたいんです。僕は学びの場としてコンサルティングファームは素晴らしいところだし、実際大企業の経営に大きく貢献していると思いますが、自分の求める・やりたいビジネスモデルではないなという風にも思いました。僕がやりたいことは社会の課題を見つけて自分で事業にしていく・一から作って大きくしていくという事で、ここでは出来ないなと思いました。そう思っていた時に今務めているVertexからヘッドハンティングを受けました。そこはスタートアップの経営支援をして大きく育てるための専門の部隊で、これが今の自分にうってつけのキャリアだと思いました。スタートアップの企業が人やお金を集めて事業を進めて大きくしているところを実際に見て学んでいきたいと考え転職を決意しました。

 

双日からアクセンチュアに転職して感じた苦労などはございますか?

 一般論として、転職する際は「働く場所(ロケーション)・機能・役割(ファンクション)・業界(インダストリー)のうち一つまでしか変えられない」と言われています。例えば不動産業界の財務部門から総合商社の財務部門に転職するというのはインダストリーしか変えていないので比較的簡単ですが、これを総合商社の営業部門のような形で2つ同時に変えるというのはかなり難しい、ということです。僕の場合は、双日M&Aの案件を主に扱っていたので、アクセンチュア戦略のM&Aの部門で採用されたのだと思います。

 それでも大変だったことはたくさんあって、パワーポイントやエクセルのなどのスキルのギャップを埋めるのは大変でした。双日ではある程度フォーマットの決まっている方法があって、財務系の勉強をしていればできる処理を行うことが多かったのですが、アクセンチュアで求められていたのは、バラバラのデータをどういう方法で分析すれば意味のある示唆が導けるかという全く違うスキルでした。このスキルの埋め合わせには本当に苦労しましたし、今でもそういったものには苦手意識があります。

 逆に良かったことですが、双日では語学の能力や、財務モデルの知識、ビジネス現場の生々しさについて理解が得られたので、お客様の心を掴むコミュニケーションの面では圧倒的なアドバンテージがありました。苦手な部分は同僚とかにお願いして、自分の得意な部分で仕事をしていきました。でも今思えばコンサルティングファームで価値を出すというのはそういう事なんだろうと思います。

 

最後に就活生へ一言お願いします。

 就活生の時期ほど自由に自分のキャリアを描ける期間ってないと思います。就職してキャリアを積んでいくと自然と「色」が付くもので、今やっていることからだんだん抜け出しにくくなってしまいます。しかし大学生は完全に自由に、自分が人生かけてやりたいことを考えることができる。

 だからこそ自分がやりたいことに対して、今の選択がベストなのかを徹底的に考えてほしいと思います。例えばOB訪問を一つするにしても、単に勤務地とか福利厚生とかを聞くのではなく、「僕はこういうことがやりたい、こういうスキルが獲得したい。それはあなたの会社に入って得ることは出来ますか?」と聞くべきだと思っています。自分なりに考えて仮説を立てて検証する。そうしないと一生その企業の本質は見えてこないと思います。そのもとになるのはやはり「自分が何をしたいか」だと思うので、それは徹底的に考えてほしいと思います。

 考えることって簡単ではないですが、だからこそ自分が信じたことに正直かつ貪欲にいることが大切だと思います。